内閣府が2022年に行った調査では、ひきこもり状態にある人数が、15~39歳が62万人、40~64歳が84万人、総計146万人もなり、前回
調査からの3年間で31万人もの増加になります。
2018年調査時点では、中高年の7割が3年以上、5割が7年以上、3割が10年以上、30年以上も6%と長期化が進んでいることが伺え
ました。
また、文科省の調査では、2022年度の小中学校における不登校児童生徒数は約30万人と10年連続で増加し、過去最多を更新しています。
解決の妨げとなっている主な要因は、状況把握の困難さからの早期段階の対応の誤りです。最初から病気と決めつけ、医療機関へ無理やり
連れて行ったり、当事者の意識にまかせ、いたずらに時間を経過させてしまっていたりです。
先ず何よりも、長期化に歯止めをかけることです。長期化というのは、同時に高齢化を意味します。もちろんその高齢化は、引きこもり者
だけではなく親もです。親亡き後の本人の生活維持の備えをどのようにはかっていくかが深刻な問題であり、内閣府も「ひきこもり支援者
読本」の中で提案をまとめています。
長期化することでのメリットは、もちろん何もありません。それどころか、精神疾患などが発症してしまう恐れもあります。ところが、
困ってしまう事態(長期化)を招いてしまっているのが、親自身であることを自覚できている親がほとんどいません。
気づかない内に、自身がどう長期化を招いてしまっているのか。
現状の改善に対して、「本人が動かないから、どうしようもない」としてしまっていることです。
「動かない」という不満だけで、「動かしていく」「仕向けていく」という発想がありません。「言っても聞かない」という言葉がよく
返ってきます。口で言っただけで動かないのは当たり前のことです。引きこもり者たちは、周囲からの促しに対して、素直に行動に移せる
状態にはありません。反発、抵抗など、背中を向けることが通常です。
それが「支援」が必要な状態にあるということです。
『和庵(やわらぎあん)』は、ひきこもりを親自身の問題として受け止め、決してあきらめず、わが子との“絆”を取り戻すことで解決を
はかっていく行動する親の学び場です。親御さん自身が当事者意識をもつことがとても重要なことなのです。
当事者とは、引きこもりの子をもつ親という意味での当事者ではなく、「引きこもり状態をつくっている当事者」という意味において
です。
引きこもりの長期化は、親子の共同作業です。だからこそ、親が適切な対応を取ることで解決の緒に就くことが可能となります。
「自分の力だけで解決していくことをあきらめる」「自分が他人の助けを必要とすることを受け入れる」そのことを自覚し、積極的に外に
支援を求めていかなければなりません。
「あきらめる」というのは、現実を明らかに見極め、受け入れる。覚悟を決める。ということです。
分からないこと、できないことをそのままにせず、「見守る」という言葉で自分を納得させ、「今さら」と解決そのものをあきらめてしま
わないためにも、引きこもりの長期化は、親が促進しているという自覚に基づいて「ここでやめる」と、決心覚悟を行うことが重要なの
です。
本人の意志に任せた(依存した)見守りは、セルフネグレクト(育自放棄)に手を貸すこととなってしまいます。
問題を共有し、共に成長(共育)していき、社会的健康(人を愛する・はたらく)を取り戻していくという意識が、解決の要となってきます。
『和庵(やわらぎあん)』は、そのための「学び場」です。
引きこもり現象は、心身に障がいは無くとも、日常生活に著しい障害をきたしている状態であることを深く認識し、適切な援助を施して
いくことが急務の課題なのです。